毎週、日本を代表する名峰の一つにスポットをあて、その雄大で美しい山容を余すところなくお伝えいたします。さらに、これまでNHKに蓄積された映像をふんだんに織り交ぜ、衛星画像を使用した3次元立体の「名峰3D地図」もパワーアップ!日本の山岳映像の永久保存版というにふさわしいシリーズをお届けします。
NHKの公式サイトにこんな売り文句があるこの番組。11月の本放送開始以来、見られない日には録画して(今のところは)欠かさず見ている。
がっ、しかし。夏に放送した、予告編ともいうべき4回シリーズを見ていやな予感がしていたのだが、その予感どおりにがっかりすることになってしまった。
これには、自分の場合は2つの要因がある。
まず、映像が使いまわしであること。
『大雪山』や『鷲羽岳』の回では2年くらい前に放送された「国立公園2泊3日トレッキングの旅」の映像が使われていた。『鷲羽岳』では見覚えのある黒部遡行の映像も多く、番組で案内役だった志水哲也氏が(後ろ姿や横顔ばかりだったけど)やたらと映っていたためか、エンドロールに「取材協力」としてクレジットされていた(大雪山の市根井孝悦氏の名前はなかった)。ほかに気づいたところでは、剱岳の回に「さわやか自然百景」の『北アルプス 剱岳』とそっくりなのがあった。
なにしろ見ていて全然統一感がない。いかにも継ぎはぎの寄せ集め映像な感じがしてしかたない。ひょっとしたら、このシリーズのための撮りおろしは空撮だけなのではないか。公式サイトの売り文句は、これまでNHKに蓄積された映像をふんだんに織り交ぜ
たとあるが、実際のところは「寄せ集めた」というのがより正確なのではないだろうか。
こういうのって、登山コースを紹介するのにはどうかと思う。天気はコロコロ変わるし、映っている人もコロコロ変わるから、同じ道を進んで行っているという感じがまるでしないのだ。
もうひとつは、番組のテーマが見えないこと。
かつての日本百名山シリーズには、「その山に思い入れのある人が、その山に登り、その山の魅力を語る」というスタイルがあった。人間味があってよかった。こんな山があるんだ、行ってみたいなあという気にさせられた。「さわやか自然百景」は、逆に人間を極力排して、景色や動植物をクローズアップしている。こんなところにこんな生き物がいるんだ、実物を見てみたいなあという気にさせられる。
しかしこの「週刊日本の名峰」シリーズは、見てもそんな感想を持てない。たしかに映像はきれいなんだけど、「ああきれいだな」で終わってしまう。ファッションモデルなんかに、顔はきれいだけどどんな顔だったか思い出せないような人がいたりするが、なんかそんな感じだ。
(たぶん)過去の映像を編集しただけだから、統一したテーマなんてないのだ。シリーズはおろか、ひとつの山をとっても、たとえば『鷲羽岳』や『北岳』では登山コースが2本紹介されていて散漫。「魅力を多面的に紹介する」といえば聞こえはいいが、焦点が定まらなくて冗長な印象しか残らない。
あと、がっかりとは違うのだけれど、気にくわないというか、違和感を覚えるところが、ひとつの山の範囲。
山の人気投票をやったりすると問題になるのが、どこまでをひとつの山とするか、ということだ。これが自分の感覚とマッチしないと「そりゃ違うだろ」となってしまう。だから雑誌なんかでこのテのことをする場合は、あらかじめ「○○岳は△△山に含みます」なんていう注意書きがあったりするのだが。
今まで放送された分でそれを激しく感じたのは、『大雪山』の最終目的地がトムラウシ山だったこと。そういや公式サイトの大雪山のフラッシュもトムラウシ山だ。