ダルマの民俗学 --陰陽五行から解く--(岩波新書)
2007-09-02


この本を最初に読んだのは新刊のときの1995年で、目からウロコがぼろぼろと落ちまくって楽しかった。今回が2度め。
ダルマ信仰がメインの題材だが、副題にもあるとおり、陰陽五行の解説本と言っていいと思う。


最初の2章、総ページ数210の1/3を割いての「はじめての陰陽五行」がおもしろい。自分は前から日本の古典文学や城郭建築が好きだったので、干支による時間や空間の表現は基礎知識としては持っていた。が、日常の様々な事象まで陰陽五行で説明してあり、わからなかった問題がとけたときの一種のすがすがしさを感じる。たとえば「青春」という言葉があるが、どうして春が青いのかなんていくら考えてもわからなかったが、これでようやくすっきりできた。
すると他にもいろいろ考えが広がってくる。ひのえうま生まれの女性の差別伝説は、60ある干支のうちでもひのえうまが一番火の気が強いからで、八百屋お七のせいで云々と言われるのは、きっと後世のこじつけなんだろう・・・とか。

でも第3章以降は、同意できない人もいるかもしれない。
鳥なんかは、解釈によって「朱雀」として南のものになったり、「酉」として西のものになったりと、ちょっと都合がいいなあと思ったり。ダルマがなぜ赤いのか、なんてのもこじつけともとれる。辻褄が合ってるというだけで、あくまでも筆者の推測でしかないからだ。まあ、筆者も本文中でそのことをことわっているのだが。
当たり前かもしれないが、合う人には合うし、合わない人にはまったく合わない本だろうと思う。自分は合った方で、非常に面白く読めた。

(吉野裕子著・1995年)(2007年8月30日読了)
[本]

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