まだ、タバコですか?(講談社現代新書)
2008-07-11


タバコに関する本を読むのはこれが3冊めだ。
最初の1冊は岩波新書の『タバコはなぜやめられないか』で、読んだのは1994年のこと。単純に、タイトルと同じ疑問を持ったから読んだ。この本で初めて、喫煙が止められないのはニコチンという「薬物への依存」だからだ、ということを知った。なんだ、つまり、麻薬と一緒なのか。
次も同じく岩波新書で『現代たばこ戦争』。これは1999年に読んでいる。この本で、アメリカにおけるタバコ訴訟では「喫煙者がタバコを吸って病気になるのは自業自得」という考えが、変わってきていることを知った。毒だという情報を隠したまま売り続けたタバコ会社に責任があり、喫煙者はその被害者だというのだ。でもちょっとこれには納得いかなかった。じゃあその煙を浴びせかけられてる我々非喫煙者はなんなんだ、と。冗談じゃない、被害者はこっち(非喫煙者)に決まってるだろ。

しかし今回この『まだ、タバコですか?』を読んで、ようやく喫煙者に同情できるようになった。彼らが薬物依存の被害者だということが理解できたのだ。以前に読んだ2冊の本が有機的につながった感じだ。

麻薬依存症者のほとんどがタバコを吸っています。そこで、依存症で治療を受けている患者に、麻薬とタバコとどちらが断ちにくい? と尋ねてみると彼らはこう答えます。”タバコのほうだ。タバコのほうがやめられない”(31頁) タバコが嗜好品だというのなら、TPO(時・所・場合)をわきまえて、自分の意志で喫煙行為を制御できなければおかしい。呼吸器の弱い高齢者や乳幼児、妊婦の前でも平気で吸えてしまうのは、薬物が行動を起こさせているからにほかならない。こう考えると「喫煙マナー」をいかに声高に訴えても、ニコチンに支配された脳にはほとんど意味がないことがわかる。(36-37頁) レストランなんかで喫煙者を観察すると、次の皿を待っている間に吸っている人ばかりで、自身が食べ物を口に運んでいるときにタバコを吸う人はひとりもいない。食べ物とタバコを一口ずつ交互に口にしている人はいまだかつて見たことがないのだ。どんなヘビースモーカーでもそうだ。おそらくそんなことすると自分の食事がまずくなるからだろうと思うのだが、周りが食事中なことに彼らは気づいていない。自分が避けていることを周囲に強要する無神経さに腹がたってしようがないのだが、それもこれでわかった。薬物依存とは恐ろしいものだとあらためて思った。

タバコの毒性についてはもう耳タコなので、ここでは他の気になった話題を挙げてみる。

禁煙外来の医師の証言が興味深かった。患者にはタバコのマイナス面を言わないのだという。いくら有害性や家族の健康について話をしても、ほとんど認知できないからだというのだ。まずは、タバコをやめるとこんなに良いことがあるんだ、ということから話すらしい。

タバコ農家の「タバコ酔い」というのも初めて知った。タバコは植物として生えている状態でも毒素を発するため、タバコ農家の人たちは収穫のときに気持ち悪くなったりすることがあるらしいのだ。
そのうちこういう人たちが国やらタバコ会社やらを訴えたりするのだろうか。このまま野放しだと、最近のアスベスト問題とか薬害エイズ事件みたいになってしまうのではないだろうか。

ちょっと首をかしげたのは、アルツハイマー病との関連性について。
この本を買った理由のひとつが帯に書いてある「アルツハイマー病予防」を覆すという一文だった。上に書いた本『タバコはなぜやめられないか』で、アルツハイマー病患者に喫煙者が少ないために喫煙がある程度の効果があるのではないかという説が載っていて、タバコには「百害あって一利だけ有り」、というふうに自分は見ていたので、どう覆すんだろうと思って期待して読んでいたのだ。
でも、いきなりこんな文が出てきてびっくり。


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