西南戦争(中公新書)
2008-12-08


西郷隆盛は不平士族に担ぎ出されて西南戦争を起こしたと学校で習った(ような記憶がある)が、本当にそうだったんだろうか。西南戦争に関してはそんな素朴な疑問を持っていた。


西郷は明治6年の政変に敗れて鹿児島に帰ったあとも、政府からその動向をマークされていたということもあって、その当時の発言が少ないようだ。さらに、開戦以降は発言が極端に少なくなる。彼自身が薩軍の求心力であり存在理由でもあったため、発言はおろか、万一を恐れて行動も制限されていたらしいのだ。
そんな数少ない西郷の発言からは、大義名分にこだわり、またその名分がないことから、はやる士族らを抑えようとしていたことがわかった。つまり、戦争を始めたのは西郷自身ではなく一部の不平士族だった。そして西郷は、蹶起してしまった彼らを見捨てることができずに仕方なく首班の座に収まった、という印象を受けた。

この本は、通常歴史本ではさらっと流されてしまう各戦闘の展開も書いてあって、戦記としてもおもしろいと思う。ただそのせいで時系列が前後してしまうことがあって、戦争全体の流れをつかむにはちょっと苦労した。そのためにも付録かなんかで年表があったりすると理解の助けになったとは思うのだが。

「あとがき」によると、西南戦争に関する新書本はこの本が50年ぶりの発行なんだとか。

(小川原正道著・2007年)(2008年11月6日読了)
[本]

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