これは歴史の授業で「長州征伐」として習う内戦についての本だ。筆者に考えがあって、あえてその名称は採用していない。確かに、プロローグにあるように征討する側が敗退した戦争を「征伐」と称するのは名前倒れだ
と言われればそのとおりだ。なるほど。
サブタイトルが「幕府瓦解への岐路」となっている。そういえば、徳川幕府ってどうして滅びてしまったんだろう。財政難とか外圧とかが考えられるけど、幕府は別に破産したわけじゃないし、外国に占領されたりしたわけでもない。
で、筆者によると、この長州戦争がそのきっかけだったというのだ。
章立ては大きく4つに分かれていて、第一章「長州が政敵になるまで」、第二章「第一次征長」、第三章「江戸と山口」、第四章「第二次征長」となっている。
第二章・第四章はタイトルのとおり。第一章は1860年桜田門外の変のあたりから始まり、禁門の変を経て長州征討令が出るまで。第三章はサブタイトルが「二つの主戦派」ということで、二度の征長の間の幕府・長州双方の動きを記している。
この第三章が非常におもしろかった。長州が戦争を決意して富国強兵の方針を採る過程がよくわかる。幕府側のダメっぷりが対照的に描かれている。第四章にかけて、諸藩が幕府に愛想をつかしてどんどん離れていくのを見ると、政権が滅びるときはもろいものだと改めて思った。
おもしろい本だったが、参照資料に『防長回天史』がやたらと多いのが気になった。
また、ときおり小説のような薫りがする文体はちょっと気になって好きになれなかった。そういやプロローグで伏線を張っているのも文学的だ。あと、戦地の地図が局所的なものばかりなのが残念(しかも見にくい)。まあこれは単に自分が地図好きだからそう感じたのかもしれない。