これは神武天皇から昭和天皇にいたる歴代天皇の事績を、ひとりひとりについて簡潔に述べた本だ。
極めて抑制のきいた文体は、巻末の索引・年表・系図ともあいまって、新書という「読み物」よりは、どちらかと言えば「資料」を思わせる。
「資料」を淡々と読み進むうちに、なんだか日本の歴史はずいぶんと平板なんだなあという印象を持った。
もちろんそれは間違いで、鎌倉時代以降武家に主役の座を奪われてから、天皇自身の業績に目立ったものがなく、尻すぼみ状態で読み終えてしまったためにそんな印象になったのだと思う。たとえば古い時代には皇位継承をめぐる騒乱がやたらと多かったりなど、周りはいつもにぎやかだったようだし、摂関政治や院政も天皇を抜きにしてはありえないものだ。
実際、本文は約300頁なのだが、平安末の安徳天皇までで200頁に達しており、鎌倉・室町期も60頁で、江戸時代以降の400年が40頁だけでは尻すぼみの印象にならざるをえない。まあ平安時代は数年での譲位を繰り返していたから人数も多くなり、それだけ頁数が増えるということもあるのだろうが。
学校で習う日本史では英雄のように思える聖武は実は・・・とか、譲位の慣行が始まった理由とか、知っているつもりでいて知らなかった事柄も多くあり、尻すぼみの「資料」ではあったが楽しく読めた。
(笠原英彦著、2001年)(2004年2月10日読了)