徽宗の「五色鸚鵡(おうむ)図」が見たくて、旅行の途中で名古屋ボストン美術館に寄って「花鳥画の煌き」なる展覧会を見た。他の作品にはあまり興味なし。さらっと流して昼飯を食いに行こう。
ボストン・ギャラリーに入場するといきなり青銅器が。花鳥画とどういう関係があるのかと思ったら、き龍紋が花鳥デザインの萌芽だという。そりゃあチトこじつけだろうと思ったが、青銅器好きの自分としては、フックがにょきにょき飛び出た特異な形状が気になったのだった。結構珍しいお宝だと思う。
で、そのすぐあとにお目当ての五色鸚鵡図が。ふつう、展覧会の目玉は展示の中盤以降に配置することを考えると、なかなか大胆な構成だ。まあ時代を追っていくとどうしてもこうなってしまうのかもしれない(なにしろ1000年も昔の絵なのだから)。
で、ミョーに暗い一角に展示してある。古い絵画では当然の処置だが、それにしても暗い。単眼鏡を使ってどアップで見てみると、かなり劣化が進んでいるということがよくわかる。まあしかたないんだろう。
徽宗というと社会科の教科書なんかに載ったりする「桃鳩図」(国宝)で有名だが、この五色鸚鵡図はなんだか対を成しているように見えなくもない。なんというか気品があるように感じるのは、現代にも通じるような構図のセンスのせいだろうか。
あとはたらたらと流す。その間も、鳳凰の絵がグロかったり、四君子がきれいだったりと、期待していなかっただけに尚更おもしろかったりしたのだが、朝鮮のコーナーはこれまたこじつけくさいなあと思った。
朝鮮コーナーを過ぎると日本の花鳥画に。ここに狩野派の花鳥図屏風があった。パンフレットにも使われているところをみるとこれが目玉なのだろうか? でもまったく興味がわかなかった。徽宗の絵のほうがはるかに好きだ。
ラスト手前に広重と北斎が。この青が実に美しかった。相棒は、北斎の「芍薬とカナリア」の画中でカナリアを「カナアリ」と書いているのが気に入らないようだった。
展示一覧がなかったので(たぶん)、ちゃんとした題名を思い出せないのが残念。
花鳥画を後にしてオープン・ギャラリーとやらの「アメリカ近代写真のパイオニア」へ。アンセル・アダムズという写真家の展示があるようだ。かなり有名な人らしいが、門外漢の自分は知らなかった。
写真は正直言ってほとんど興味がなく、入場料を払ったのだから通り過ぎてでも見てやろうという感覚だった。さっと通り過ぎて早く昼飯食いに行こう、と思っていた。
がっ。これは非常に良かった。
何がよかったかというと、風景写真。人物の写真などもいくつかあったが、展示の多くは風景写真で、それも山の写真が多い。自分が山好きだからということもあろうが、この作品群には感銘を受けた。
すべてモノクロ写真だが、色がなめらかで深い。モノクロとはこんなに美しいものかと吃驚した。それが撮影技術によるものか、プリントの技術によるものかは分からないが、そんな屁理屈は抜きにして、とにかく美しい。黒澤明監督がモノクロにこだわってカラー映画をなかなか撮らなかったというのがわかった気がした。モノクロの中にこそ本物の色があるのだ(ちょっと大げさ)。
まず、ヨセミテのハーフ・ドームの岩壁(原題:Monolith, Face of Half Dome, 1927)。新聞紙くらいの大きさでプリントされたものがあり、目がくぎ付けになってなかなか立ち去れなくなってしまった。岩の迫力が凄まじい。そして空が、深く濃く、美しい。
また、冬の嵐のあと