ルソーの見た夢、ルソーに見る夢
2006-12-05


サブタイトルは『アンリ・ルソーと素朴派、ルソーに魅せられた日本人美術家たち』ということで、ルソーだけではなく、素朴派と呼ばれる作家たちと、ルソーが日本美術に与えた影響もあわせて見てみようという企画だ。
なんとなくB級な感じが漂うので観に行こうかどうしようか迷っていたが、美術展系のブログを閲覧するとかなり評判が高いので行ってみることにした。


会期もほとんど終盤なので混雑することを予想し早めにでかけた。用賀駅から直通バスで美術館に着いたのは開場20分前の9:40。そのときはまだ1グループしかいなかったが、開場直前になるとかなりの列ができあがった。
以下に印象に残ったものを。

熱帯風景、オレンジの森の猿たち(ルソー)
No.23。チケットやチラシに使われている絵。展示室に入ると正面で出迎えてくれる。アンリ・ルソーというと、ジャングルに獣とか鳥とかがいる真っ平らな絵、というイメージを持っているが、これはまさにそれ。緑とオレンジのバランスがほどよくて、気持ちよい。
フリュマンス・ビッシュの肖像(ルソー)
No.5。これもなかなかいい絵だ。明るい色の人物と、薄暗くて不安げな背景。ウルトラマンみたいな巨大な人間が空中浮遊している感じ。遠近法もへったくれもないが、顔はきっちりと黄金比に配置。そのせいか、落ち着くような落ち着かないような、不思議な感覚にとらわれてしまった。
カミーユ・ボンボワ
初めて知った画家だが、ダメ。気持ち悪い。生理的に受け付けない。相棒も同じ感想だった。(でも不思議なことにボテロは結構好きなのだ)
冬の狩(ルイ・ヴィヴァン)
No.41。『ぷっすま』の草なぎ画伯、または、ずうとるび江藤が『絵スチャー』で描くような犬。おもしろすぎる。
第2章「素朴派たちの夢」で紹介されている4人の絵は、この1枚を除いて、なにかしら受け入れがたいものを感じた。可もなく不可もなく、ならまだいいが、明らかにマイナスを指向している。なぜだろう。
信号台(岡鹿之助)
No.55。第3章の「日本近代美術家たちとルソー」では一番のお気に入りとなった。なんだかキュビスムの絵のようだ。
立てる像(松本竣介)
No.84。松本竣介の代表作。たしかにルソーの一連の肖像画にそっくりだ。この絵は過去に見たことがあるが、すげぇ迫力だなあという印象ばかりで、ルソーの影響なんてまったく思い及ばなかった。
妻のいる砂丘風景(III)(植田正治)
No.124。モノクロ写真。遠近感が欠落した感じがルソーちっく。砂漠とか砂丘はそういうモチーフとして適しているのかもしれない。
<フットボールをする人々>より(横尾忠則)
No.131。ルソーの絵のパロディが並ぶ。どうせなら足かせも付けてくれれば囚人らしくなってもっとおもしろかったのに、と思った。
花降る森(有元利夫)
No.137。割と好きな画家で、3枚出品されていた中ではこれがいちばん気に入った。ちりばめられた花びらがファンタジックな雰囲気を醸し出している。
自分は、彼の絵からはルソーの影響を感じとることはできなかった。強いて言えば遠近感のない平面的な表現、というあたりなのだろうか? ちなみに「ルソー 有元利夫」でググってみると、558件しかヒットしない。しかも今回のこの展覧会の感想・解説ばかり。あまり一般的な解釈とは言えないのではないだろうか。
ROUSSEAU-KIT「フットボールをする人々」(青木世一)
No.150。最後にインパクト大の展示があった。箱に「1/2 SCALE」なんて書いてあったりして、芸が細かい。楽しいなあ。
ちょっと傾向は違うが、だまし絵空想美術館(閉館したらしい)にあるゴッホの部屋を思い出した。

ルソーが与えた影響を見る、という企画意図は当たりだと思ったが、いかんせん、ルソー以外の素朴派と日本画が、作品じたいが激しくつまらなかった。そんなせいか、なんだかちょっと消化不良でがっかりした感じ。期待しすぎたのが仇になったのかもしれない。


続きを読む

[美術]

コメント(全0件)


記事を書く
powered by ASAHIネット