後期の見所は、なんといっても徽宗皇帝筆の桃鳩図。公開が10年ぶりくらいというレアアイテムだ。で、さらに、公開期間がほんの1週間程度とさらにプレミア感に拍車がかかる。このお宝を拝むには、休日と合わせるとなると勤労感謝の3連休しかチャンスがない。
まあでも、前期に行った感じからするとどうせ空いているだろうと、土曜の午後に悠々と出かけることにした。
相棒と待ち合わせて昼食をとったあと、東京の三井本館に着いたのはもう3時近かった。
7階の美術館に直結するエレベータを降りると、1か月前と変わらない雰囲気。前回の半券を提示してリピーター割引でチケットを購入し、中に入ると、意外にも展示ケースに人が群がる状態で、明らかに前期よりも混んでいた。
- 徽宗筆 桃鳩図(個人蔵・国宝)
- No.1。ケースの前が人だかりになっていた。とは言っても10人ほどが群がる程度で、どこぞの金印みたいな行列を作るとかそういうことではない。その10人とて波があり、うまく乗れれば間近でバッチリ見られるのだ。
かつて、同じ徽宗筆「五色鸚鵡図」を名古屋ボストン美術館で見たことがあるが、まあ暗いし薄いしで見難いことこのうえなかった。その先入観があったのだが、それを完全に吹き飛ばすくっきり度でびっくり。ハトの眼の周りの襞もよく見えた。この気品はどうだろう。前の日に見た東博の国宝展にも宋画のよいものがあったが、これも負けず劣らず素晴らしい。凄くよいものを見た気がしたのだった。
世界史の教科書に登場する徽宗は文人皇帝でどうのこうのと書かれるが、そう言うと下手の横好きみたいに思ってしまうが、実はプロ級の腕前なのだ。
- 伝徽宗筆 秋景山水・冬景山水図(金地院・国宝)
- No.3。小さな猿と小さな鶴をみんな探していた。樹上の猿はすぐわかったが、鶴は難問だった。
- 牧谿筆 漁村夕照図(根津美術館・国宝)
- No.41。漁村夕照図は過去にも見ているが、やはり墨の濃淡でもやっとした景色を表現するのが絶妙で、やっぱり感心。
- 伝牧谿筆 翡翠・鶺鴒図(MOA美術館)
- No.44。そもそも実物が白黒のセキレイはともかく、あのカラフルなカワセミを墨の濃淡だけで表現しちゃっているのが凄い。枝に止まってる脚とか短い尻尾とか、実によく観察していると感心。
馬蝗絆や飛青磁花生や油滴天目は前回同様(当たり前か)、美しかった。
最後にもう1周してから会場を出た。客の単眼鏡使用率が異様に高かった。どこぞの国宝展とは大違いで、それだけマニアが集まったということが言えるだろう。もちろん団体客なんかいる訳がない。美術が本当に好きな人しか来ないのだ。
会場を出るとすでに17時になんなんとしていた。近くのフランス料理店に電話してみると席が空いているというので、三越で時間をつぶしてから行った。思ったより高かったが、思ったよりはるかに良い店だった。いろいろと満足できた一日だった。
(三井記念美術館・2014年11月22日観覧)