小林清親展
2015-04-12


NHK日曜美術館で知った画家。明治時代に活躍した、最後の浮世絵師という。明治の洋風建築と浮世絵版画の融合がおもしろく、夜の表現がなかなか良さげ。で、練馬区立美術館で回顧展をやるというので、行ってみることにした。


予報は曇り時々雨。昼に家を出た頃はちょうど止み間だった。しかし池袋から西武線に乗ったあたりで降り始めた。沿線の桜はまだ散らずに残っていた。
中村橋駅に着いたのは13時過ぎで、ちょっと腹が減ってきた。美術館のホールに軽食コーナーがあるので、そこでサンドイッチを食べた。オムレツが具材になっていて一風変わったものだが、なかなか旨かった。
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館内はさほど混んでいなかったが、それでも思ったよりは人がいた。もっとガラガラだと思っていた。

順路は2階から。展示は第1章が光線画、第2章が風刺画・戦争画、第3章が肉筆画・スケッチという構成で、うち第1章の版画は橋、街、夜、水、空、名所、火事、動植物、風俗というテーマに分類されていた。
また、予想外だったのだが、会期中に展示替えがあるという(このため出品リストはA3紙両面2枚の大作だった)。げげ、あと何回か来ないといけないのか? 公式サイトにもそんな記載はないので面喰らったが、注意深くリストを見ると、別の所蔵先の同じ作品に替えるパターンが多かったので(版画だから同じ作品があちこちにあるわけだ)、相当なマニアでもない限りは再訪しなくて済みそうで、ちょっとほっとした。

海運橋(第一銀行雪中)
No.4。第一銀行のモダンな建物。明治東京の新名所というが、それにしてもごてごてとした建物だ。
東京新大橋雨中図
No.5。チラシや図録の表紙にあしらわれている作品。川面のゆらゆらの表現がよい。「東京」は「とうけい」と読ませるようで、枠に書いてある英語のキャプションも「TO-KEI」となっていた。
駿河町雪
No.32。広重の名所江戸百景で有名な三井越後屋と、洋風建築の三井組為替バンクが同じ画面に並ぶ。この対比がいい。雪の積もる屋根には輪郭が描かれていないので、なんか不思議な感じ。これは1879(明治12)年頃の作だが、その3年前の作である海運橋(No.4)の第一銀行は輪郭がある。
川崎月海
No.53。帆船が大砲を撃っている図、なのだろうか。西洋版画にありがちな題材だし、画面の中には日本的なものはない。何の説明もないと洋版画に思えてしまうが、火花の表現がなんとなく浮世絵的。
大川岸一之橋遠景
No.57。2人の車夫が人力車を曳き、俥には女のシルエット。バックには満月が照っている。情緒的だ。
本町通夜雪
No.60。夜、雪の中を走る馬車。ガス燈のような、光の周辺だけ雪が表現されているのがリアル。NHK日曜美術館では、この作品で多色摺りを解説していた。
新橋ステンション
No.70。この展覧会で一番気にいった。新橋駅の夜の情景。人々が傘をさしていたり、提灯の灯りが地面に反射する様子から、雨が降っているのだと一目で分かる。こないだ見たホイッスラーのノクターンシリーズみたいな印象。
明治十四年一月廿六日出火 浜町より写両国大火
No.106,107。実際の火事を描いた画家は珍しいとか。火の粉が飛び散っているのがなかなかリアル。この火事をスケッチしている最中に自分の家も焼けてしまったんだとか。
明治十四年二月十一日夜大火 久松町ニ而見る出火
No.109。自宅が全焼してしまった1/26のわずか2週間後、2/11の火事も取材に出掛ける清親。懲りない人だ。
明治十四年一月十六日出火 両国焼跡

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[美術]

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